Firefox3のカラーマネジメントonで色が綺麗になるっていうのは違うんじゃないか?

***今日はバイク日記じゃないよー!***



 Firefox3.* でカラーマネジメントがサポートされてはや数ヶ月、3.1 ではデフォルトでこれがonになっており、たいへんうれしいかぎりです。でもなんか「とりあえずonにしとけば色が綺麗になるお」とかいわれているのが、まだそれはちょっとちがくね? と思ったのです。

 カラーマネジメントは、Web にかぎっていえば「作ったものが、どの端末でも同じ色に見える」のが目的です。この同じ色っていうのは結構難しくて、たとえば、Webの人なら #FF0000 が赤だというのは多くの人が知っていますが、実際どんな赤かはモニタとかによってバラバラです。

 手元にあった2つのモニタを測色器で測ってみました。超かんたんにいうと、中央は色がない状態、外側にいくに従って色が濃くなります。グラフは、そのモニタが表示できるもっとも濃い色の限界を表しています。

 外側の色が付いてるやつがナナオのL887, 内側に薄く線で描かれてるやつがレッツノートの液晶です。L887 はちょっと古いですが、それでもレッツノートの液晶はL887と比べて、あまり濃い色が出せなさそうですね。濃い(彩度の高い)緑を出そうとして #00FF00 とか表示させたとしても、比べたらレッツノートのほうが色が薄くなってしまい、同じ #00FF00 でも色が違うということになってしまいます。

 これは、ウェブ周辺の色関連のもろもろ(RGB)が相対的な色空間であることに起因します。緑を「最も彩度の高い緑(#00FF00)に対してどれくらい濃いのか」でしか表現できていないのですね。

 でも、今まで「まあ仕方ないでしょ」とされてきました。しょぼいモニタを使っていれば色は浅いし、広色域の良いモニタを使っていれば色が鮮やかに見えていました。でもこれって正しく色を届けたい人からすると悲しいことです。しょぼいモニタの色がしょぼいのは仕方ないけど、良いモニタで表示されてしまうと想定以上に色が鮮やかになってしまって、下品に見えてしまいます。自分でアップした写真とかイラストの彩度が、想像もつかないところで勝手にギンギンに上がってたら嫌でしょう...?



 正しい色で表示するためには「アップした人(制作者)」と「表示している人(閲覧者)」の両方の表示環境が同じ、または両方ともカラーマネジメントされている必要があります。制作側もカラーマネジメントの必要があるということです。そのため「Firefoxカラーマネジメントをonにしたらきれいになった」というのは、ラッキーな偶然です。制作側の環境(特にWindows)が変動的である現状では、必ずしも on がもっとも正しい結果とは限りません。


 onにしたらきれいになるケースとそうでないケースを考えてみると、

  • きれいになったよ派
    • 制作者が正しくカラープロファイルを付加している場合
      • 閲覧者の環境よりも制作者のほうが広色域(しょぼいモニタでも出来る限り鮮やかに表示するよ)
    • 制作者がカラープロファイルを付加していない場合
      • Firefox 3.0 はそれを sRGB とみなすので、制作者の環境が偶然 sRGB に近ければOK (WindowsVista等で制作?)
      • sRGB とみなさない設定(3.1のデフォルト)ならかわらないはず
      • もし sRGB とみなしたのに制作者の環境が sRGB じゃない場合はおかしくなる(Macで制作?)。変に鮮やか過ぎるのはこれかな。
    • 制作者が正しくないカラープロファイルを付加している場合(Windows制作によくある)
      • たぶん制作者が想定している色とは違う。カラーマネジメントoffのがまだ元の色に近いのではないか
  • かわらないよ派
    • 制作者がカラープロファイルを付加していない場合
      • Firefox 3.1 のデフォルトで見ている
    • WindowsVista?
  • むしろしょぼくなったよ派
    • 制作者が正しいカラープロファイルを付加している場合
      • 制作者の環境より閲覧者のほうが広色域(それが制作者の想定している色なのでしょぼいとか言っちゃだめ)
    • 制作者がカラープロファイルを付加していない場合
      • 制作者の環境より閲覧者のほうが広色域(RGBじゃないor本当にしょぼい)
      • sRGB とみなさない設定(3.1のデフォルト)ならかわらないはず

 というわけで、制作者が正しくカラーマネジメントしていない場合、またはきっちりカラーマネジメントしていてもWebだからカラープロファイルなしで出力している場合は、かえって色が狂うこともあります。彩やかな方面に狂うこともあるので、きれいになったから正しいとは限りません。

 ただし、近い将来カラーマネジメントが有効であることが常識になるだろうし、もとより制作者の環境なんてわからないし、とりあえず無効よりは有効のほうがいいでしょう。でも有効なら全部きれいで万全ってのは間違いで副作用もありうるよ!

 もし有効にして正常にカラーマネジメントされた画像を表示したとき、新たな問題があるとすれば、閲覧者のモニタがしょぼいとクリップを起こして、階調が失われて色がぶっ潰れることくらいですかね([鮮やかな緑]と[超鮮やかな緑]は両方とも[鮮やかな緑]として表示されるので区別できなくなる)。確認してないけど、Firefox はモニタの色空間にはノータッチなので Windows だと多分こうなります。この問題で困るのはどちらかといえば制作側ですけども。